水虫の知識

水虫はこうして重症化していく

私たちは、無数の白癬菌に囲まれて生活しています。
つまり、菌が皮膚に付着しやすい環境を誰もが持っているといっても過言ではないのです。

そして、ある一定の時間、菌を付着したままにしていると、この菌が角質層を溶かして侵入し、感染が成立します。

ただ、初期の段階では白癬菌はおとなしく、皮膚の表面のアカが少しむける程度で、目立った症状はまったく現れません。

そのため、白癬菌に感染していることに気づかず自然に治ってしまう人、あるいは治ることも悪化することもなく、生涯を終わる方もいます。

 

水虫の急性期

雷雲

六月中旬、梅雨の入り口にさしかかると、周囲の環境が高温多湿になり、菌が増殖し始めます。
周囲の環境に刺激された白癬菌が活動を開始してしまい、皮膚が攻撃され始めるのです。
すると、皮膚が菌を排除しようとさまざまな反応を起こします。

足がムズムズするのも、この反応の一つです。
そのため、痒み、発赤、水疱など強い症状が引き起こされるようになります。

自覚症状が現れるこの初期段階を「水虫の急性期」といいます。

 

 

どんな風に症状は現れるのか

皮膚の表皮の基底層といわれるところには、ランゲルハンス細胞という免疫担当細胞があります。
この細胞が菌の分泌物や死骸などの情報をャッチすると、皮膚の深部に移動してリンパ球を呼び寄せ、白癬菌の情報を伝達します。

すると、今度はこのリンパ球が、自分が所属するリンパ節に移動し、仲間のリンパ球を分裂・増加させ、大量の抗体をつくり始めます。
そのため水虫の急性期には、化膿菌が入ったわけでもないのにリンパ節がはれ、高熱を出すことがあるのです。

たくさんの仲間をつくったリンパ球は、再び病変部位に戻ってきて、さまざまなサイトカインといわれる化学物質を分泌します。

水虫は皮がむける

このうち一部のサイトカインは、表皮細胞の分裂を促進して表皮のターンオーバーを早めます。
水虫になると皮膚がポロポロとたくさんむけるようになるのはこのためであり、白癬菌を振るい落とそうする作用なのです。

 

水ぶくれができちゃう

またある一部のサイトカインは、多くの白血球を呼び寄せ病変部で闘わせます。これらの
白血球は闘い疲れると死に、その間際にたんばく融解酵素を出すため、水抱や濃抱ができます。

水虫になると水抱や膜抱ができるのは、白癬菌が病変部に居着くからではなく、白癬菌を追い出すために生じた免疫、アレルギー反応が作用するからなのです。

この現象は「うるしかぶれ」と同じと考えてください。
人の皮膚は異物が侵入してくると、 排除のために免疫、アレルギー反応を起こします。
この時点の白癬菌の成分は、うるしの成分と同様な働きをするので、水虫の急性期は皮膚が非常に過敏になった状態といえます。

 

 

これと同じで、健常な皮膚になら問題のない市販薬でも、過敏な皮膚に塗ると、かえってかぶれてしまい、何十倍もの強い皮膚症状を起こしてしまうことがあります。

 

別の菌も参戦してくる

かゆみに耐えきれずかきむしると、皮膚に傷がつきます。
すると、この部位より化膿菌が入りやすくなります。
化膿菌におかされた病変部は、赤くはれあがり、強い疼痛が起こりますし、リンパ管炎を生じ、股のリンパ節がはれて痛み、歩くのさえ難しくなることもあるのです。

 

水虫の人の中でも激しい症状の人だと 「これは単なる水虫ではなく重大な病気なのでは・・・」 と心配される方もいます。
しかし、この時期は人の免疫、アレルギー反応が強く働いているときであり、その力を上手に利用して治療すると、早い段階で治すことができるのです。

したがって、水虫はこの急性期の間に治療することが大切なのです。

 

水虫の重症化への道のり

急性期は2年~3年繰り返し起こります。
しかし、この2~3回ある急性期、そう夏のあいだは、ある意味治療するチャンスだったわけですが、これを放置して過ごしてしまうと、水虫は土踏まずや足の指の間など、地面との摩擦の少ないところに定住するようになります。

 

このどちらか一方に症状がなるというより、時間が経つうちに、両方の症状を併発してしまう人も多くみられます。

ただ症状のあらわれるときに、水虫薬を塗る程度で治っていく人も一部におり、とくに生活に支障を生じることがなければ、生涯を水虫とともに過ごしてしまう人もわずかですがいるようです。
これは体質や生活習慣にによるものでしょう。

 

 

冬と水虫

冬

暑い夏が終わり、だんだんと過ごしやすくなっていくとともに、水虫の痒みが徐々に緩和されていくことでしょう。
冬になったころにはすっかり水虫のことなど忘れ、快適な生活を取り戻したと思っていたはずが、気温の上昇とともに、再び足がじくじくし始める。
これは水虫患者の大半が経験する一年の流れです。

夏が来るたびに再発を繰り返すのは、白癬菌の好む環境と季節の変化とに関係があるためです。
地球上のほとんどのカビがそうであるように、白癬菌も高温多湿な環境を好みます。

乾燥や寒さに弱い

白癬菌も生き物なので苦手な環境もあります。
冬になると、痒みが治まるのは、菌が乾燥や寒さに対して活動が鈍くなるからです。

残念ながら冬になったからといいって白癬菌が死滅するわけではありません。
皮膚の角質内部に潜んで、繁殖しやすい条件が再び整うのを待っているのです。

気温が下がってくると、症状がかなり軽減されるため、

「水虫、治ったんだ」

と勘違いして治療をやめてしまう人が多いのですが、完全に菌を死滅させない限り、毎年再発を繰り返します。

それだけではなく白癬菌に寄生された期間は、長くなればなるほど深く広く浸透し、症状は年を追うごとにどんどん悪化し、慢性化していきます。
それだけ白癬菌は抵抗力が強いカビであり、治療に時間がかかるのです。

 

冬でも水虫になる人がいる

水虫といえば湿度があがる梅雨から夏にかけてなってしまうイメージですが、冬でもなるんです。

突然、足が猛烈に痒くなりだした。

冬場にこう感じたら、それは水虫かもしれません。

 

便利だから

人間は、文明の発達で便利で過ごしやすい生活環境を手に入れました。

室内では温度、湿度とも一定に保つことができ、外気の寒暖を問わず、年中、快適に過ごすことができます。
しかし、この快適な環境が、冬でも水虫の繁殖をうながす結果にもつながっているのです。

暖房のきいた部屋にいて、激しい痒みに襲われた人も少なからずいるでしょう。
こたつに当たっていて、症状がぶり返してしまった水虫の人もいるでしょう。
人間が過ごしやすい環境は、同時に白癬菌にとっても拾好の繁殖地になるからです。

 

 

 

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