強力な水虫薬が登場し完治させることが可能となっている現代ですが、それでも爪の水虫「爪白癬」を完治させることは容易ではありません。
爪白癬は真菌によって爪が分厚くなったり、濁ってしまったり、もしくはもろくなったりする感染症である。
爪の水虫である爪白癬は通常、爪水虫からスタートしません。
多くの場合は足の水虫が侵攻した結果、爪にまで感染がいたるからです。
また、高齢になるにつれて爪白癬の感染率があがります。
しかし、ちゃんとケアすれば治すことができます。
爪白癬の治し方
治療するためには、その人の日常生活やその人を知ることで治療方針が変わります。
下記のような様々な条件が一人一人異なるからです。
- 年齢
- 性別
- 職業
- 家族歴
- 水虫だった期間
- 病型
- 侵されている爪の部位、数、程度
- 合併症を持っているか? (糖尿病、膠原病、血液疾患など)
- 現在服用している薬との影響
抗真菌薬で治そう
爪水虫の治療において
- 塩酸テルビナフィン
- イトラコナゾール
この2つの薬が登場して飛躍的に治療は進歩しました。
水虫を治せる薬といっても良いレベルに至っています。
しかし、現在でも爪白癬を治癒させることは容易ではありません。
爪白癬が治しにくい理由
その理由として、いくつかあります。
治癒までに長時間を要すること
新陳代謝によって爪が完全に入れ替わるためには、足の皮膚よりもさらに時間がかかり、手の爪なら半年、足の爪は一年が必要になります。
そのため、一見爪がきれいなって治ったかのように見えても、菌を撲滅できているわけではありません。
最低でもそれ以上の期間は、爪とその周囲に薬を塗り続ける必要があります。
でなければ再発してしまう可能性があります。
薬剤無効例が2~3割程度存在すること
爪白癬の場合、爪の先端部より爪甲下に白癬菌が入り込み、爪床にそって増殖を繰り返し、病変が起きることがほとんどなので爪の深部に菌が存在することが多い。
細菌の外用抗真菌薬はかなり強い抗真菌活性がありますが、毛内や毛孔あるいは爪の深部に真菌が存在している場合などでは、そこまで有効成分が浸透しないため、十分な治療効果を発揮できません。
つまり外用抗真菌薬は、爪表面に塗っても有効成分が厚くて硬い爪を浸透できず、菌が存在するところまで到達しないため、無効とされている。
高齢者
爪白癬の人には高齢者が多い傾向があります。
爪の変形や白濁を老化現象だと思っているため、自覚症状があまりないため治療意欲が維持しにくいこともあります。
そのため爪白癬の第一選択薬は抗真菌薬の内服療法になります。
抗真菌薬の内服
爪白癬の治療において効果的なのは内服薬です。
爪は人間の体の中でも硬い部類であり、薬が浸透しにくいので表面に塗ってもあまり効果がありません。
しかも白癬菌は、爪の下の柔らかい部分を狙って、隙間から侵入してどんどん侵食します。
そのため、外側からは塗り薬、内側から内服薬を使い挟み撃ちにしましょう。
気を付けるべきこと!
合併症に注意
糖尿病、高脂血症、膠原病、血液疾患などの人は、感染に弱くなっており、血流が低下しているため、爪をつくるために必要な栄養が十分にいきわたらないと、爪の再生にも通常以上の時間がかかってしまうのです。
老化も要因です
爪白癬は50歳を過ぎると急に増える傾向にあるようです。
お年寄りでは、3人に1人は爪白癬という調査結果もあります。
これは、爪への血流量の低下や爪の伸びる速度が遅くなるなどが関係すると考えられます。
相互作用の危険性
お年寄りは、長年内服し続けている薬があることが多く、その薬と経口抗真菌剤との相互作用の危険性も考慮しなければなりません。
イトラコナゾール
強い抗真菌力と幅広い種類の真菌に効果があります。
白癬菌やカンジダ属、アスペルギルス属など皮膚糸状菌と呼ばれるものに効果的です。
イトラコナゾールの特徴
服用すると爪母(爪を生み出す根元)、爪床(もし、爪をはがしたら見える皮膚)の両方から薬剤が到達する。
そして、角質とのなじみがよくしっかり浸透する。
薬を飲むのをやめてしまっても4週間は皮膚に貯留することが可能で、爪の場合には6ヶ月以上貯留することができる。これにより、静菌的、殺菌的に効果を発揮する。
そのため、服用期間が短いにも関わらず治癒率が高い。
パルス療法が使える
イトラコナゾールの特徴である”長く皮膚に効果が続く”ことを利用したパルス療法というものがあります。
爪白癬の治療法ですが、一週間薬を飲み続けて、その後3週間薬をやめるという一ヶ月を1セットとして3セット行う治療法です。
パルス療法では、肝臓への負担を減らすことができます。
いわゆる休肝日が作れるのです。
イトラコナゾールの欠点も理解しましょう
- ほかの薬と一緒に飲んではいけません。という併用禁忌などがかなり多い。
- 肝障害、腎障害、胃腸障害、妊婦などは使えません。
- 他の薬と比べると価格が高いこと
イトリゾール【抗真菌薬イトラコナゾール】
抗真菌薬の塗り薬を併用しよう
爪白癬の治療には通常、内服薬と外用薬を併用し、白癬菌を体の内と外から攻めて行くことが効果的です。
塗り薬と飲み薬を併用することにより治癒効果を上げ、内服期間を短縮できるとも言われています。
外用薬は病巣のある先端部だけでなく、爪の周囲、 とくに根もとの爪母へは念入りによく塗ってください。
こんな方にも外用薬はおすすめ
内服薬であれば確実性が高く、再発率も低いので使いたいところですが、肝障害などの合併症や併用薬などにより内服ができない人や副作用を恐れて内服をしたくないと考える人も多くいます。
治癒が望めない場合でも、抗真菌薬の外用薬ならば、家族や他の人への白癬菌をまき散らしてしまうことや体の他の部分への感染を防ぐという意味でも使うべきであると考えられます。
大切なポイント!
薬を塗るときは、角質をふやかして柔らかくしておくことで、薬剤の浸透が良くなります。
そのため、水虫のタイプにかかわらず、お風呂上りに塗るのが効果的です。
完全に乾いてしまってからでは薬の効果が半減してしまいます。
浸透してこその効果ですから。
ラミシールクリーム
有効成分の塩酸テルビナフィンが殺菌的に作用します。 1日1回で効きます。 |
ミコナゾールクリーム
有効成分のミコナゾール硝酸塩が殺菌的に作用します。 1日 2~3回塗ってください。 |
爪白癬の予防
爪白癬にならないようにするために必要なことはやはり、ここまで進行させないことが重要です。
爪白癬は、足の裏や指の股などにできる水虫が、爪の下にまで及んだことによるものです。
そうなる前に対策をすることが予防と言えるでしょう。
早く病院に行かなきゃダメ!
爪白癬は重症度合いで治療結果も大きく影響してきます。
- 爪白癬の水虫になっている期間
- 病型
- 爪のどの部分か
- 何本の指が侵されているか
- どれくらい進行しているか
などです。
多くの人は、一つの爪のうち半分以下にしか病変が現れていないと、爪白癬だとは気がつかないようです。
しかし、この時期はある意味チャンスでココをを過ぎると、爪病変は比較的早く進行し、病気の爪の数が増加し、爪の変形、肥厚も著しくなってきます。
爪白癬のになってから5年以上と長い人、病爪の数が4個以上と多い人や爪の肥厚の程度が強い人は、治療に長期間を要する傾向にあるようです。
もっと早く病院に行っていれば治療も早く終わります。